かつて都市の中のコミューンであったデンマークの首都コペンハーゲンにあるChristianiaから徒歩約5分ほどのところに、Paper Island(Papirøen)といわれる島がある。運河に囲まれたこの島は、政府の情報や資料などを印刷するための工場、そしてそれらを保管しておく倉庫群として古くから活用されていた。運河沿いに工場や保管庫があるのは、その当時、船舶を使った物流がメインであったためだ。
しかし時代は移り代わり、情報媒体も紙からデジタルへ進行していくと、その場所の役割自体も次第に薄れてきてしまう。そこでこの島の活用に目をつけたのが、コペンハーゲン市と建築家・ステートアーキテクター。彼らは「食」、特にストリートフードやファッションカルチャーで島を再活用しようと動いた。
時を同じくして、コペンハーゲンのNOMAというレストランが世界一のレストランに選ばれた時期でもあり、政府としても”食”に関する起業家を増やして支援していきたいという背景があったそう。ただ食で起業をするとなると、施設費用、人件費、広告宣伝費などと費用がかさんでしまうのが常。この課題に注目し、費用の多くを占める場所をシェアすることにより、施設費用の圧縮ができるほか、同じ空間をシェアすることで宣伝効果も期待できる。そうしてPaper Islandに生まれたのがCopenhagen Street Foodなのだ。

Paper Islandの敷地に入るとまず目に入ってくるのが、HENRIK VIBSKOVというファッションブランドのガレージセール。色鮮やかでファッショナブルなそのブランドは、長年著名なファッションデザイナーがあまり生まれてこなかったデンマークにおいて、ファッションシーンを牽引している一つのアパレルブランドである。ガレージセールを通り抜けると、倉庫群の前の屋外で食事や会話を楽しむ人だかりを見つけることができるだろう。
そう、ここがPaper Islandに期間限定で、常設されているCopenhagen Street Foodという空間だ。中に入るとは所狭しとフードカートが立ち並び、メキシコ料理やイタリア料理、韓国料理に日本料理、クラフトビール、デザートにもってこいのジェラートなどもあり、モットーでもある"Genuine, honest and aesthetic"を体験できる空間になっている。

ここで出店している”食”の起業家たちは、2つの権利を手に入れることができる。一つは施設費用をシェアできるということ。そしてもう一つが、このPaper Islandの活用方法について意見できるというもの。期間限定のCopenhagne Street Foodの終了後のPaper Islandの活用方法について、自身の特技や価値を提供することも可能なのだ。

このようにコペンハーゲンは、場所を食のキュレーションによって再活用してきた。形や表現は違えど、この美味しい本質的な料理を食べたいという欲求は、世界で同時多発的に起きており、東京でも「Gourmet Street Foodー東京美食屋台ー」が青山の国連大学Farmer’s Marketでスタートする。
食べるものが人をつくり、その人々が都市をつくるとするならば、東京ならではの情報や状況の編集力に期待していきたい。“東京らしい”とはどういうことだろうか。コンセプトやストーリーが取り巻く状況のもと美味しい本質的な料理を食べて、その食の状況全体が、いち都市の風景として馴染んでいけるようなStreet Food Cultureが大都市東京でスタートする。